スターバックスといえば、世界中にファンがいるコーヒーチェーン店の代表格です。
実は、スターバックスは銀行としての側面もあることをご存じでしょうか。
本記事では、スターバックスが銀行と呼ばれるようになったビジネスモデルの秘密をご紹介します。
スターバックスが銀行と呼ばれる理由は、スターバックスカード(プリペイドカード)やアプリの事前チャージシステムにあります。
驚くことに事前チャージによって、なんと客から16億ドルものお金を預かっているのです。
なぜスターバックスは、16億ドルもの巨大なお金を動かせるほどに成長したのでしょうか。
そこで、スターバックスが成長したおもな理由である「信頼性」と「マーケティング」についても解説します。
目次
スターバックスが銀行と呼ばれるワケ
スターバックスは銀行と呼ばれていても、本当に銀行になったわけではありません。
銀行と呼ばれる理由には、スターバックスの事前チャージを活用した財務戦略があります。
チャージは無意識にお金を預けていることになる
スターバックスが銀行と呼ばれる理由は、事前チャージにより客が無意識にお金を預けていることにあります。
スターバックスのプリペイドカードである「スターバックスカード」やアプリは、事前にチャージした残高で商品を購入する形式です。
カードやアプリにチャージした金額は、支払いに使用するまで実質スターバックスにお金を預けるのと同義です。
事前に預けたお金から支払うというプリペイドカードのシステムは、銀行の預金と非常に似ています。
そのため、非公式ながらも「銀行」の役割を担っていると考えられます。
また、キャッシュレスの発展もスターバックスに預けるお金が増大した理由です。
日本のスターバックスでは、キャッシュレス利用率が60%を超えています。
2022年12月から「デジタル スターバックス カード ギフト」が開始されたこともあり、さらなるキャッシュレス化が進むと予測されています。
スターバックスカードやアプリが広く利用されることで、スターバックスはより客からお金を集めることに成功しているのです。
預かっている金額は総額16億ドル
経済学者のコーニング氏は、スターバックスが16億ドルもの金額をスターバックスカードからの負債として計上したことを指摘しています。
つまり、スターバックスは事前チャージによって、顧客から総額16億ドルものお金を預かることに成功しています。
16億ドルは日本円では約2,492億(2023年5月現在)であり、預金額としては非常に高額といえるでしょう。
また、一般的な銀行への預金と違い、スターバックスにチャージした金額は無利子です。
あくまでスターバックスはコーヒーチェーンであり、行政の規制を受けることはないためです。
私たちが最終的にコーヒーやフードに交換するまでの間、チャージした金額は無利子であり、現金で引き出すこともできません。
さらに、スターバックスカードには有効期限があるものも存在します。
期限切れになったチャージ額は、すべてスターバックスの利益となります。
無利子で期限切れのリスクがあるにも関わらず、なぜ多くの人はスターバックスに事前チャージするのか疑問に思われる方もいるかもしれません。
その理由は、事前チャージしてスターバックスを利用すると、リワードが付与されお得に利用できるためです。
リワードにより事前チャージの利用者が増えることは、リピート購入や客単価アップにも貢献しています。
スターバックスはプリペイドカードにより無利子で大量の資金を確保し、莫大な利益を生み出しているのです。
預かったお金は店舗拡大に投資している
スターバックスは、プリペイドカードで得た資金を新規事業の拡大へ再投資しています。
2024年3月末時点でスターバックスは日本国内だけで1900店舗以上を展開しており、今後も増加する見込みです。
プリペイドカードからの安定した資金確保により、スターバックスはより多くの資本を投じています。
預かったお金はいずれ客が使うものなので、投資に使うとマイナスになるのではと思われる方もいるかもしれません。
スターバックスが顧客から集めたお金を自由に投資できる理由は、預金引き出しリスクの低さに秘密があります。
当然ですが事前チャージで集めたお金は、使用する際に顧客へ返済することになります。
ただし銀行と違い、スターバックスに預けたお金は現金で受け取りません。
スターバックスにチャージしたお金は、コーヒーや食品の購入という形で使用されています。
現金引き出しと異なり一度の支払い額が少額になるため、より多くのお金を事業拡大に使用できるのです。
この戦略はスターバックスが持続的に成長を遂げる基盤であり、大きな強みになっています。
結果としてスタバ指数※なる言語が生まれるほど、銀行並みに影響力のあるコーヒーチェーンとなったのです。
※スタバ指数とは:スターバックスのコーヒー1杯の価格を基準に、地域ごとの物価や経済状況を比較する指標。通貨の強さや為替レートの算出にも役立ちます。
スターバックスカードやアプリの仕組み
スターバックスカードやアプリで、リワードを利用する方法は下記のとおりです。
- 事前に、公式アプリや登録済みのスターバックスカードにチャージします。
- チャージ金額でドリンクやフードを購入すると、54円(税込)あたりスター(Star)が1つたまります。
- たまったスターは、商品の先行販売や割引などに使用可能です。
また、スターバックスでは、年間獲得スターに応じた特別なサービスも提供しています。
リワードを活用すればお得に利用できたり、プレミアな限定商品を手に入れたりするチャンスです。
スターバックスにとっても、客単価やチャージ金額のアップ、コアなファン層の獲得につながります。
リワードはまさに「三方よし」のサービスといえるでしょう。
スタバカード以外でチャージができるカードの例
スターバックスだけでなく、他の企業にもチャージ式のシステムが存在します。
これらのカードは、事前チャージで買い物がスムーズになるだけでなく、さまざまな特典が得られる点で人気です。
以下に、スタバカードと同様のシステムを採用している他企業をいくつか紹介します。
コメカ(コメダ珈琲)
利用できる店舗 | 全国のコメダ珈琲店 おかげ庵 KOMEDA is □ ADEMOK 大餡吉日 |
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利用方法 | 店舗でカード発行 コメカカードを登録した公式アプリ |
ポイント・還元 | 利用金額の1%をポイント付与 貯まったポイントは、1 ポイント=1 円、10 ポイント単位で利用可能 |
プレシャスカード(上島珈琲店)
利用できる店舗 | 上島珈琲店 UCCカフェプラザ メロウブラウンコーヒー |
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利用方法 | 店舗でカード発行 プレシャスカードを登録した公式アプリ |
ポイント・還元 | 利用金額の3%をポイント付与 1ポイント=1円として利用可能 メンバー登録でお得な制度あり |
タリーズカード(タリーズコーヒー)
利用できる店舗 | タリーズコーヒー |
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利用方法 | 店舗でカード発行 |
ポイント・還元 | 1杯購入ごとに10円引き |
ドトールバリューカード(ドトールコーヒー)
利用できる店舗 | ドトール エクセルシオールカフェ |
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利用方法 | 店舗でカード発行 ※発行に300円かかるが、300円分のポイント付き |
ポイント・還元 | 2,000円以上チャージで、金額の5%〜のポイント付与 商品購入時は、100円毎に1ポイント付与 1ポイント=1円として利用可能 |
モスカード(モスバーガー)
利用できる店舗 | モスバーガー モスバーガー&カフェ マザーリーフ |
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利用方法 | 店舗でカード発行 公式アプリ |
ポイント・還元 | 3,000円以上チャージで、金額の1%のポイント付与 1ポイント=1円として利用可能 誕生月に抽選でプレゼント 利用実績に応じたプレゼントやクーポン |
チャージ式のプリペイドカードの共通点
チャージ式プリペイドカードは利便性とお得さにより、広く受け入れられています。
カードの利用がもたらすメリットには、いくつかの共通点が存在します。
具体的な共通点は下記のとおりです。
- 発行元の信頼性
- 特別な割引やサービスの提供
- マーケティング戦略
それぞれの項目について、順に解説します。
発行元の信頼性の高さ
プリペイドカードを発行するためには、多くの顧客に信頼される企業であることが大前提です。
その理由は、消費者が企業にお金を預けることが前提になっているビジネスモデルであるためです。
オリコンが発表した「おすすめのカフェランキング」では、前項目で紹介した企業が上位にランクインしています。
スターバックス:1位
コメダ珈琲店:2位
上島珈琲店:3位
タリーズコーヒー:4位
ドトールコーヒーショップ:8位
参考:https://life.oricon.co.jp/rank-cafe/
ちなみにモスバーガーに関しても、ハンバーガーショップとして絶大な人気を集める企業です。
人気ランキングに名を連ねるということは、それだけ多くの消費者に信頼され支持されている証拠といえるでしょう。
スターバックスは、質の高い接客や豊富なカスタマイズ、おしゃれな店内が特徴です。
このような顧客第一で質の高いサービスを提供し続けることで、多くの人の信頼を勝ち得ています。
また、支持されるプリペイドカードの共通点として、安心して所持し続けられることも影響しています。
人気を集める大企業なら、突然の倒産や情報漏洩のリスクは低く、安心して利用できるためです。
企業にとっても顧客からの信頼は、プリペイドカードから継続的な収益を生み出すカギといえます。
特別な割引やサービスの提供
プリペイドカードの大きな魅力は、利用することで得られる特別な割引やサービスです。
利用者限定の特別なサービスはリピーターを増やし、新しい顧客を惹き付ける効果があります。
また、プリペイドカードは商品割引に使用するほか、限定商品の交換や特別なサービスを提供している場合もあります。
コアなファン層にとって特別なグッズやサービスは、非常に魅力的なものです。
スターバックスにコアなファン層が多い理由は、利用率に応じた特別なアイテムやサービスが充実していることも理由といえるでしょう。
プリペイドカードによる特別な割引やサービスを充実させることで、リピート率や客単価アップの効果が期待できます。
マーケティングにも有用
プリペイドカードを利用することにより得られる顧客データは、企業にとって非常に価値があります。
集めたデータを分析することで、顧客の購買傾向や好み、行動パターンを把握できるためです。
マーケティングにより、多くの顧客に支持される新しい商品やサービスの企画、キャンペーンの立ち上げを可能にします。
とくにコアなファン層に支持される商品やサービス作りは、プリペイドカードの利用をより促進するものです。
プリペイドカードを用いたマーケティング戦略を展開することで、顧客満足度をさらに向上できます。
スターバックスは銀行並みの影響力をもつ存在
スターバックスは単なるコーヒーショップを超えて、経済的な影響力で銀行に匹敵する存在となっています。
カードやアプリへの事前チャージは、利用するまでスターバックスが無利子で預かっているのと同義であるためです。
スターバックスは顧客から集めた16億ドルものお金をビジネスに投資することで、世界中に規模を拡大させてきました。
しかしプリペイドカードの事前チャージは、企業自体やサービスへの満足や信頼がないと成立しません。
継続して利用してもらうには、顧客第一のサービスやコアなファン層を掴むマーケティングが重要となります。
スターバックスが銀行並みの影響力をもつまでに発展したのは、質の高いサービスによる企業自体への信頼があるからこそといえるでしょう。