透明性を求めて:募金の実態

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透明性を求めて:募金の実態

募金とは「お金を募って集めること」、寄付とは「金銭または物品を贈ること」。募金と寄付は、その行為を行う立ち位置が異なりますよね。それでは「支援金」と「義援金」の違いはわかりますか? 寄付されたお金の使い道は? そもそも募金しているその団体、実在しますか?

1. 災害支援の募金「支援金」と「義援金」

募金には医療支援、災害支援、教育支援、社会福祉支援、環境保護支援など様々なカテゴリーがありますが、そのうちの災害支援を目的とした募金は、大きく分けて「支援金」と「義援金」があります。

支援金とは、被災地で活動するNPOなどの非営利団体に送られるお金のことを指します。一方の義援金とは、被災された方すべてに対して公平に分配されるお金のことを指します。

「支援」という目的は同じですが、その使い道やお金の流れなども異なりますので、まずはそれを理解することが大切です。

出典:日本財団ホームページ「支援金と義援金の違い」

2. 支援金の特徴

寄付金の送付先NPO法人など非営利の被災地支援団体
寄付金の使途救命や復旧活動など被災直後から支援に必要な活動にスピーディーに使われる
寄付者ができることどんな支援に使ってほしいか、寄付者の希望に合わせて寄付先の団体を選ぶことができる
活動報告各団体によって収支や活動の報告、支援金の用途が公表される

3. 義援金の特徴

寄付金の送付先非営利団体、自治体、内閣府、テレビ局、企業など募金の窓口となっている団体を経由して被災した自治体へ送られる
寄付金の使途被災された全ての方に直接配布される(被災者の情報を正確に把握する必要があるため、配布されるまでには時間を要する)
寄付者ができることお悔やみの思いが直接届けられ、被災者個人が必要なことに役立ててもらえる
活動報告各団体によって集まった義援金額などは公表されるが、個人が必要なことに自由に使えるため、使途を把握することはできない

4. 代表的な団体の募金の仕組み

ユニセフ募金

世界150以上の国と地域に支援事業があり、集められた募金はその活動に使われる「支援金」となります(義援金ではありません)。

募金の種類

通常募金ユニセフが定めた優先順位に従って各国の支援計画や予算に基づき活動費として配分される
緊急募金紛争、災害、人道危機などが発生した際にその地域の子どもや女性のための緊急支援活動やその後の復興支援活動に使われる
分野・地域指定募金特定の分野や地域を指定し、そこで必要な支援活動に使われる
ユニセフ支援ギフト途上国の子どもたちにプレゼントする支援物資を調達し届けるための諸費用に使われる

募金の流れ

寄付された募金(2022年は募金額の87.4%)は、ユニセフ国内委員会(日本ユニセフ協会)からニューヨークのユニセフ本部へと届き、33の国と地域の各国政府と協力してユニセフ現地事務所の活動に使われます。

日本を含む各国のユニセフ協会は、ユニセフ本部との協定により、寄付された募金のうち最大25%の範囲内で募金活動、広報・アドボカシー活動などの国内事業をおこなっているため、100%がユニセフ本部に届くわけではありません。

出典:日本ユニセフ協会 2022年度 収支報告概要

日本赤十字社

1つの寄付を集めているわけではなく、個人が行える寄付に対して3種類の使い道を示しています。それらはきちんと細分化されており、必要なものを届けられる仕組みになっています。

募金の種類

日本赤十字社の活動資金例えば災害時の救援活動や災害に備える訓練などにも使われ、日本赤十字社全体に寄付するという意味合いがある
国内災害義援金被災者の生活支援に役立てられる寄付。被災した都道府県の「義援金配分委員会」に全額送られ、同委員会で定める配分基準に従って市区町村等の自治体へ配分されるもので、日本赤十字社の活動資金や事務経費などに使われることはない
海外救援金海外で大規模な災害や紛争などが起きた際に、被災各国の赤十字社および日本赤十字社が現地で実施する救援活動や復興支援活動に役立てられる

日本赤十字社の活動資金は「社資」といい、会員(社員)の会費である社費と上記1の寄付金から構成されています。令和4年度、社資を主な財源として実施した活動にかかる一般会計の歳入歳出は図表のとおりです(特別会計:医療施設、血液事業、社会福祉施設を除く)。

赤い羽根共同募金

厚生労働大臣によって定められた期間に全国で一斉に行われる共同募金運動のことで、各地域の福祉団体等から届く課題解決に必要な助成申請を基に計画を立案し、それに必要とされる目標額を定めて募集する「計画募金」です。

募金の種類

一般募金
歳末たすけあい募金新たな年を迎える時期に、支援を必要としている人々が安心して暮らすことができるよう実施している募金で、「地域歳末助け合い募金」と「NHK歳末たすけあい募金」がある
テーマ型募金寄付者の皆様が様々な地域課題に対して特に応援したい活動を選んで寄付し、その寄付額が団体への助成額に直接反映される

募金の運動期間

毎年10月1日から3月31日までの6ヶ月間(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第112条の規定に基づく)

社会福祉法第112条(共同募金)

この法律において「共同募金」とは、都道府県の区域を単位として、毎年一回、厚生労働大臣の定める期間内に限つてあまねく行う寄附金の募集であつて、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄附金をその区域内において社会福祉事業、更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く。以下この節において同じ。)に配分することを目的とするものをいう。

募金の流れ

  1. 地域の福祉団体等が共同募金会に助成(毎年の目標額を設定)
  2. 募金箱の設置、各募金活動がスタート
  3. みなさんが募金したお金は各地域の共同募金会へ
  4. ① 集まった募金の約7割が募金の地域で使われる(地域助成)
    ② 残りの3割は市町区村を超えた広域の活動、災害時の備えなどに使われる(広域助成)

5. 善良な寄付者の心を掻き乱す、募金の使われ方やチャリティ番組の裏側

チャリティ番組といえば、真っ先に思い浮かぶのが、日本テレビ系列および沖縄テレビ放送で生放送されている「24時間テレビ 愛は地球を救う」。1978年にスタートし、2023年で通算46回を記録している長寿番組です。

2022年9月30日時点のytv(読売テレビ)の公式ホームページには、

45年間の募金総額424億1,725万5,957円
(近畿2府四県では43億7,774万9,818円)となります。
お預かりした寄付金は、経費を一切差し引くことなく、全額、全国の福祉支援、環境保護活動支援、災害復興支援に活用させていただきます。

24時間テレビ 実績|読売テレビ

と掲載されていましたが、2023年11月に日本海テレビジョン放送株式会社における元幹部による寄付金の着服が発覚。他にも番組パーソナリティや24時間マラソンのランナー、数多くの出演者に対する高額なギャラの出所など、真偽が明かされない噂も飛び出しています。

また、一般社団法人ColaboおよびNPO法人ぱっぷすの事業への助成金問題について、4項でご紹介した赤い羽根募金の支援を行っている中央共同募金会は、

「こちらは本会が独自に寄付募集を実施している「赤い羽根福祉基金」によるものであり、毎年10月から各都道府県共同募金会が募金を実施する「赤い羽根共同募金」(いわゆる赤い羽根募金)による助成ではないことをここにお知らせいたします。」

と発表しましたが、それ以外の団体における繋がりや数字の改ざんなども指摘されており、「募金」に関する不透明な情報が、寄付者の心を掻き乱す状況となっています。

6. 募金詐欺にご用心

時代の変化、デジタル社会への変遷によって詐欺の手口は日々巧妙になり、取り締まる側とのイタチごっこが続く現代。実在する団体や組織をかたって個人情報を詐取するフィッシング詐欺や、平静な判断ができない状況下にある人を狙った詐欺事件などが後を断ちません。

募金詐欺の一例

  • 災害発生時に被災地への募金と称した詐欺
  • NPO法人を装った詐欺
  • 新型コロナウイルスに関する募金詐欺

以前、AI時代突入「フェイク」を見極める目でご紹介したように、真実を見極めるために、まずは情報の真偽を確かめる必要があります。

信用できる寄付先の見分け方

  • 活動歴や実績
  • 各企業・団体・行政との連携 
  • ホームページやSNSの活用や履歴

困っている人の役に立ちたいという善良な思いが裏切られることなく、きちんと困っている人に届き助け合えるよう、その募金が支援金なのか義援金なのか、振込先が公的なメディアで公表している情報と一致しているかを十分確認し、募金団体の真実を見極める目を持つことが大切です。

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