日本には様々な慣用句が存在しますが、皆さんはこれらを聞いたことはあるでしょうか。
「目くそ鼻くそを笑う」「鍋が釜を黒いと言う」「団栗(どんぐり)の背比べ」
いずれも、自分のことは棚に上げ(自分にもある欠点なのに)他人の欠点を嘲笑うことや似たり寄ったりで大差がないことを意味します。
さて、今回の主人公に一番似合う慣用句は何でしょう?
1. 政治と金
国民の関心が高い「政治と金」。政治は本来、国や社会のために奉仕する場であり、金はその支えとなる一方、時にはその力で政治を歪めることもあります。
政治は法律や政策を通じて社会を変える力を持ち、税金の使い道や社会福祉、国の方針などによって直接的に国民の生活に影響を及ぼします。一方、金は経済や生活の基盤であり、収入、支出、投資、貯蓄などが個人や家族の生活に密接に関わります。このように、政治と金は人々の生活に深く関わる要素であり、その影響の大きさから国民の関心が高まるのです。
この「政治と金」問題は、幾度となく世間を騒がせますが、2024年現在、昨年から続く自民党の裏金問題が一向に出口を見出せない状態にあります。情報を開示されず、まともな説明もされない国民は、政治家=金に汚いというイメージを抱きがちですが、政治家の中には清廉潔白な議員も少なからず存在し、彼らの努力が社会の発展に貢献していることも忘れてはなりません。
では、この人はどうなのでしょうか?
2. 小西洋之参院議員の略歴
1991年 | 徳島大学医学部医学科中退(教養課程修了) |
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1997年 | 国家公務員試験に合格 |
1998年 | 東京大学教養学部教養学科卒業 |
同年4月 | 郵政省に入省 |
2004年 | コロンビア大学国際・公共政策大学院修了 帰国後、東京大学医療政策人材養成講座を受講し(卒業研究:医療基本法制定プロジェクト 優秀賞)総務省で医療政策研究に従事 |
2010年 | 参議院議員選挙に初当選 |
2016年 | 参議院議員選挙で2期目当選 |
2022年 | 参議院議員選挙で3期目当選 |
3. 主な政策実績
- 2019年の台風15号において、政府と千葉県庁を動かし、2000名の自衛隊のブルーシート部隊の創設などに取り組む。
- 原発事故の観光風評被害を「千葉モデル」により救済。
- 新型コロナにおいて医療構築のための唯一の国会決議を成立。
- いじめ防止対策推進法の制定と運用。
- 海上保安体制強化法案の立案。
4. 自著本
- 『いじめ防止対策推進法の解説と具体策』 WAVE出版(2014/3/5)
- 『私たちの平和憲法と解釈改憲のからくり』 八月書館(2015/8/18)
- 『日本を戦争する国にしてはいけない』 WAVE出版(2015/8/26)
- 『平和憲法の破壊は許さない なぜいま、憲法に自衛隊を明記してはならないのか』 日本評論社(2019/1/30)
5. 自民党の政治資金裏金問題
事の発端から約1年後の2023年12月から様々な動きが見られました。
2022年11月
しんぶん赤旗が、2018年から2020年にかけて安倍派など5派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入計約2500万円を政治資金収支報告書に記載していなかったと報じました。(「しんぶん赤旗」とは、日本共産党中央委員会の発行する日本語の日刊機関紙)
2023年12月
朝日新聞が、安倍派の所属議員が販売ノルマを超えて集めた分の収入を裏金として議員側にキックバックする運用を組織的に続けてきた疑いがあると報じました。
これを機に政府内でも様々な調査や聞き取りを実施。結局岸田内閣は、官房長官ら安倍派の4閣僚を交代するという異例の事態に陥り、岸田首相も「総理大臣と党総裁の間は、より中立的な立場で国民の信頼回復に努めたい」として、自ら会長を務めていた岸田派「宏池会」を離脱しました。
2024年1月
岸田首相は、自ら60年以上の歴史を持つ派閥の解散を発表。これを受けて自民党6派閥がそれぞれ以下の結論を出しました。
- 解散:安倍派、二階派、岸田派、森山派
- 存続:麻生派、茂木派
また東京地検特捜部は、パーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったなどとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で安倍派と二階派の会計責任者を在宅起訴。
- 安倍派の会計責任者は、合わせて6億7503万円
- 二階派の会計責任者は、合わせて2億6460万円
(2018〜22年の5年間)
一方、松野前官房長官ら安倍派の幹部7人や二階派の会長を務める二階元幹事長など、派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも派閥の会計責任者との共謀は認められないとして立件しない判断。
ちなみに、岸田派も所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックしていましたが、その分は派閥側の収支報告書に収入や支出として記載していたとみられています。
2024年2月
野党側の要求で焦点化した政倫審(政治倫理審査会)。本来2月28日の開催が予定されていましたが、自民党内の調整がつかず見送られることに。岸田首相は「こういった状況のままでは、政治に対する不信がますます深刻になってしまうと強い危機感を感じており、私自身、自民党総裁として政倫審にみずから出席し、マスコミオープンのもとで説明責任を果たしていきたい。政治の信頼回復に向けて、ぜひ、志のある議員に審査会をはじめ、あらゆる場で説明責任を果たしてもらうことを期待している」と、自らが出席することを発表。こうして、2月29日と3月1日の2日間、衆議院政治倫理審査会が開かれ、岸田首相と安倍派元幹部4人が出席しました。
- 塩谷立(元文部科学大臣)
- 松野博一(前官房長官)
- 西村康稔(前経済産業大臣)
- 高木毅(前国会対策委員長)
6. 政治資金で自著爆買い
そもそも今回の自民党政治資金裏金問題は、政治資金収支報告書に「記載していなかった」ことが背景となっていますが、「記載している」からと言って見過ごすことはできない問題も多々あります。そのひとつが、小西洋之議員による自著本の爆買いです。
小西氏といえば、自民党政治資金裏金問題について国会審議で何度も登場する立憲民主党の所属であり、総務省の文書をめぐって高市早苗議院を追及することで時の人となっていますが、実は過去にその「政治資金」に関して、小西氏自身が複数回にわたり指摘を受けてきました。
2014年(平成26年)
300万円以上も政治資金で自著を購入し政治資金収支報告書に記載。それを指摘された本人は「自費出版本を購入するのは問題ない」と回答しています。
2015年(平成27年)
A | 購入先 | 八月書館 |
---|---|---|
購入本 | 「私たちの平和憲法と解釈改憲のからくり」 | |
購入代金 | 2,366,820円 | |
内訳 | 1620円×1461冊分 | |
B | 購入先 | WAVE出版 |
購入本 | 「いじめ防止対策推進法の解説と具体策」 「日本を戦争する国にしてはいけない~違憲安保法案「ねつ造」の証明~」 | |
購入代金 | 235,000円 | |
内訳 | 不明 |
尚、前項4で触れた自著本の中に登場する、残りの出版社「日本評論社 」は、著者(小西議員)が買い取っている事実を知らず、同社の書籍に関しては同様の事実は一切なく、むしろ代金の支払いが滞っていたことがあったことをテレビ番組の取材でコメントしています。
どうやら、自費出版した書籍の全てにおいて買取りされているわけではないようですね。2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行されたにもかかわらず、いじめによる痛ましい事件が後を絶たないことを受け、いじめ問題に取り組む、というのは素晴らしいことですが、教育関係者や子を持つ親への理解を深めるための方法として、当該事案には疑問が残ります。
日本全国の有業者のうち雇用者の割合は、約92%(2022年10月1日現在)ですので、働く国民の9割はどこかに属しているということになります。もし「従業員の自著本を会社の経費で買い取る」ことがまかり通るならば…そのことを想像しただけで、当該事案がいかに常識から逸脱しているかがわかるのではないでしょうか。
7. 政治資金で文具爆買い
小西氏に関する政治資金の指摘はこれだけではなく、2021年(令和3)に提出された政治資金収支報告書には、麻布食品(株)に対する支出が、合計で32万1722円、2020年(令和2)は20万1335円、2019年(令和元)16万7896円。この3年間で小西氏に関する政治団体の「小西ひろゆき後援会」から合計69万953円が麻布食品に支払われています。
麻布食品(株)についてはここでは触れませんが、着目したいのは月々の注文が全て5万円未満という点。資金管理団体の場合、備品・消耗品費は1件5万円以上のものについては、当該支出の目的を政治資金収支報告書に記載しなければならない(政治資金規正法12条2項、19条の5の2)という決まりがあるため、明細を提出しなくていいラインを見事についています。
どの職場でも、ルールに則り問題が生じないように対応することは当然ありますが、国民の血税で日々の業務を遂行する国会議員の場合、疑念が生じるような政治資金の使徒は、小西氏自身が主張するように、あってはならないのではないでしょうか。