公職選挙法は、選挙の公平を守るための絶対的なルール。しかし、法律の専門家であるはずの日本共産党の山崎拓議員がその線を越えてしまう瞬間があるのはなぜでしょうか? 法を知り尽くした弁護士が、なぜ法律違反を繰り返すのか。また、有権者である私たちも「知らない」では済まされない、公職選挙法とは。
1. 知っておかないとあなたも逮捕されるかもしれない!?公職選挙法とは
公職選挙法は、日本における選挙の公正性を確保するための法律で、国会議員や地方公共団体の議員、首長の選挙に関する手続き、選挙運動の方法、資金の使用、投票の仕方などを定めています。この法律は、選挙が自由かつ公平に行われることを保証し、不正行為を防ぐためのルールを設けています。違反者には罰則が科され、選挙の信頼性を守るために厳格に適用されます。公職選挙法は、民主主義の根幹を支える重要な法律と言えます。
「公職選挙法違反」の対象は議員や議員の関係者など、候補者側というイメージがあるかもしれませんが、一般の有権者であっても、違反すれば逮捕される可能性があります。
公職選挙法は非常に詳細で複雑な法律であり、多くの条文で構成されていますが、ここでは、よく耳にする主要な条文を簡単に説明します。
- 選挙運動の規制
選挙運動が許可される場所や方法、期間などが詳細に定められています。 - 政治資金の規制
公職選挙法内では直接的な政治資金の詳細な規制は少なく、このテーマは主に政治資金規正法によって扱われます。しかし、選挙キャンペーンにおける支出の規制に関しては、公職選挙法でも言及されています。 - 投票行為の規制
投票の秘密を守る義務、金銭や利益を提供または約束することで投票行動を左右しようとする行為(不正投票や投票買収)の禁止などが定められています。
2. ホープだけど…山添拓ってどんな人?
日本共産党のホープで、将来の委員長候補とも名高い山添氏。国会での質問や政府答弁でメディアに登場することも多い彼は、こんな経歴の持ち主です。
1984年 | 京都府向日市生まれ |
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2003年 | 京都市立堀川高校卒業 |
2007年 | 東京大学法学部卒業 |
2010年 | 早稲田大学大学院法務研究科修了、司法試験合格 |
2011年 | 弁護士登録 東京法律事務所入所 |
2015年 | 山添拓法律事務所開設 |
2016年 | 参議院議員選挙 東京選挙区より当選 国土交通委員会、憲法審査会などに所属 |
2022年 | 二期目当選(参議院東京選挙区) |
2024年 | 党政策委員長 |
彼は特に社会保障の充実、消費税の廃止、平和外交の推進を掲げて活動しており、若者や労働者の権利向上にも尽力しています。彼の政策方針は「憲法が希望」というスローガンに象徴され、平和主義と基本的人権の尊重、民主主義の価値を重んじる姿勢が見て取れます。
ところがこの方、度々公職選挙法違反でメディアに取り上げられてるのをご存知ですか?
3. やらかし1
令和4年5月、千代田区にポスティングされたチラシ。
この裏面下部には、公職選挙法に違反している記載が!
選挙運動期間(選挙の公示・告示日から選挙期日の前日まで)より前の選挙運動は事前運動とされ、公職選挙法第129条で一切禁じられています。
これは、選挙運動の開始時期を特定することで、各候補者の選挙運動をできるだけ同時にスタートさせ、公正な選挙を実現するためであり、これに違反して、刑事事件として摘発・起訴され、判決にまで至ると、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処せられ(同法239条1項1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(同法252条1項・2項)。
「○○に投票してください」のような直接的なものに限らず、立候補予定者などの名前を単に知らせるような行為でも事前運動となり得るため、記入例とは言え、この記載は事前運動と見なされる可能性が高いのです。
それをわかった上でこのチラシは制作されたのでしょうか。
4. やらかし2
公職選挙法第142条(文書図画の頒布)では、
「5 参議院(比例代表選出)議員の選挙においては、文書図画は、選挙運動のために頒布することができない。」
と定められています。
頒布が許されているのは下記の4種
- 選挙運動用通常ハガキ
- 選挙運動用ビラ
- 選挙運動用広告を掲載した新聞紙
- 選挙広報
これら以外は一切頒布してはなりません。
文書画像の一例
書籍、新聞、名刺、挨拶状、ポスター、立札、看板、提灯、プラカード、郵便物、電報、スライド、映画、ネオンサイン、アドバルーン、塀や壁等に書かれた文字、路面の砂文字、コンピューターのディスプレイ表示された情報など
この写真、どう見ても名刺を配っているように見えます。名刺じゃないとすれば、名刺サイズのビラとでも言うのでしょうか。
では、子供が左手に持っているビラとの違いは?
こちらは2022年7月3日にポストされた写真で、6月22日公示、7月10日投開票の参議院議員通常選挙の選挙運動期間中なので、タスキに名前を書くのはセーフです。
しかしこちら…
5. やらかし3
6月19日にポストされた写真。公示前にもかかわらず、堂々と名前入りのタスキで演説中。立派な事前運動です。
本来、事前運動に抵触しないためには、下図のようなタスキをしなければなりません。
名前は記載できないので、
- イメージカラーのたすきにする
- 「本人」と記載する
- キャッチフレーズを記載する
など、事前運動にあたらない範囲で工夫が必要です。弁護士でもある山添議員が、公職選挙法さえ守らず「憲法を守れ」とは、いかがなものでしょうか。
6. まとめ
他にも公職選挙法第139条では、いかなる名義であっても飲食物を提供する行為を原則として禁止しており、それは候補者が有権者に提供することはもちろんのこと、有権者が候補者や運動員などに提供することも禁止されています。
(例外として、湯茶や通常用いられる程度の菓子や選挙事務所において食事するための一定の弁当については禁止されていません)。
公職選挙法は、選挙運動の公正な開始を保証し、有権者に対して公平な情報提供を促進することで、民主主義の基礎を守る重要な役割を果たしています。にもかかわらず、違反を繰り返す立候補者が後を絶たない現状は、この基本的な原則への挑戦であり、選挙の公正性を脅かすものです。立候補者だけではなく、有権者も公職選挙法について十分に知り、遵守する責任があります。選挙法を知らずに無意識のうちに違反してしまうことがないよう、教育と啓発の強化が求められます。民主主義を健全に機能させるためには、法律を守ることの重要性を、社会全体で共有し、実践する必要があります。